★ ARNKAメール報第153号 2009.11.13
タイ人拉致判明から丸4年が経過(1)

 現在身元が判明しているタイ人拉致被害者は、タイ北部チェンマイ県出身のアノーチャー・パンチョイさん(女性)1名です。
 アノーチャーさんは1978年に突然マカオで失踪しました。
 2005年11月に北朝鮮に拉致されていたことが判明し、身元も確認されました。
 今月(2009年11月)で、2005年11月の判明から丸4年が経過したことになります。

 この4年の間、タイ人拉致解決のための様々な働きかけがなされました。
 しかし、北朝鮮の立場と対応は、「調査したがそのようなタイ人女性は北朝鮮国内に発見できなかった」として拉致を否定した2005年11月のタイ政府の照会に対する回答から、全く変化していません。

 アノーチャー・パンチョイさんの拉致判明から丸4年を経過したのを機に、拉致の経緯と4年間の動きを、数回に分けて振り返ろうと思います。

 今回は、アノーチャーさん拉致判明の経緯を振り返ります。

 アノーチャーさん拉致は、チャールズ・ジェンキンスさんと曽我ひとみさんが北朝鮮から日本に戻ったのち、2005年に行った証言から明らかになりました。
 ジェンキンスさんは、北朝鮮で1980~89年までの9年間「アノーチェ」という名のタイ人女性と近所同士で、極めて親しく交流したことを、北朝鮮から持ち帰った「アノーチェ」の写真と共に証言しました。
 ジェンキンスさんはまた、「アノーチェ」が「自分は1978年にマカオの海岸で突然縛られ船に乗せられ北朝鮮に連れてこられた」と話していたこと、「船の上では別に二人のアジア系女性もいた」と話していたことを証言しました。
 これらは2005年10月発売のジェンキンスさんの著書『告白』(角川書店)にも詳述されました。

 この件が2005年10月末にタイのテレビニュースでも大きく取り上げられると、偶然そのニュースを目にしたアノーチャーさんの家族は、すぐにテレビ局に連絡しました。
 ジェンキンスさんが証言した「アノーチェ」の個人情報と家族が知るアノーチャーさんの情報が一致し、タイ政府も調査を行い、家族会・救う会も訪問調査を行いました。
 その結果2005年11月に、「アノーチェ」とはタイ北部のチェンマイ県サンカーンペン郡出身のアノーチャー・パンチョイさんに間違いないことが明らかになったのです。

 1978年のアノーチャーさん及び二人のマカオ人女性のマカオからの同時失踪は、当時のマカオの新聞にも実名で取り上げられており、この点でも情報が一致しました。

 これで、1978年にマカオで失踪以来、27年間も全く何の手がかりもなかったアノーチャー・パンチョイさんの消息が明らかになりました。
 これは、拉致被害者が帰国しているレバノンを別にすれば、日韓以外で拉致被害者の身元が判明した初のケースとなり、北朝鮮拉致の世界的な広がりの一端をはっきりと浮き彫りにすることになりました。

 身元判明翌月の2005年12月、チェンマイ県サンカンペーン郡の実家に住むアノーチャーさんの実兄スカム・パンチョイさんと、スカムさんの長男でアノーチャーさんの甥であるバンチョン・パンチョイさんが、家族会・救う会の招請により初訪日しました。
 東京ではジェンキンスさん・曽我ひとみさんと面会し、北朝鮮でのアノーチャーさんに関する情報提供を受けました。
 曽我さんは、家族が持参したアノーチャーさんの写真が交じったアルバムを開くなり、家族が説明するまでもなくアノーチャーさんの写真をすべて「この人だ」と正しく指さしました。
 ジェンキンスさんからは、アノーチャーさんは1989年に北朝鮮在住のドイツ人ビジネスマンと再婚する(前夫は元米兵ラリー・アブシャー氏で83年北朝鮮国内で死去)ことになりどこかへ引っ越し、同年平壌市内の美容院で出会って以降は会っていないこと、このドイツ人ビジネスマンの実態は北朝鮮政府の工作員で北とヨーロッパを行き来する人物と見られることが証言されました。
 また、2003年に北朝鮮でジェンキンスさんが、先に日本に帰国した曽我さんを追って日本に居を移すかどうかを思案している時、北朝鮮当局から「もし日本に行かずに北に留まるならお前をアノーチャーと一緒にさせてやる」と懐柔されたと証言しました。
 この証言は、少なくとも2003年にはアノーチャーさんが北朝鮮国内で健在であることを強く示唆していると考えられます。

 タイ政府はアノーチャーさん拉致に対して素早く対応を始めました。
 拉致判明直後の2005年11月には、当時のカンタティー外相がタイ外務省で家族に面会を行い、さらに北朝鮮側に対してアノーチャーさんの安否を照会しました。
 しかし、北朝鮮側の回答は「調査したがそのようなタイ人女性は北朝鮮国内に発見できなかった」というものでした。
 また、ジェンキンスさんの証言をでっち上げだとして非難しました。

 上に示された北朝鮮政府がタイ人拉致を認めない立場は、アノーチャーさん拉致判明後丸4年が経った現在まで、全く変化していません。

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1.タイ人拉致被害者アノーチャー・パンジョイさん個人史
  (タイ語版・英語版・日本語版)
2.北朝鮮拉致問題に関するタイ外相インタビュー記事日本語訳[2006年2月]
3.タイ人拉致被害者実兄の思い
  [2006年4月ReACH/CHNK共催ワシントン拉致被害者救援コンサートで読まれた手紙]
  (タイ語版・英語版・日本語版)
4.タイ外務省ウェブサイトの北朝鮮紹介ページ日本語全訳
  [タイ-北朝鮮関係の基礎資料]
5.タイ-北朝鮮貿易額統計2001-2005年
  [タイは04年より北朝鮮の対外貿易高第3位](タイ語版・日本語版)
6.日本の北朝鮮人権法タイ語訳
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