★ ARNKAメール報第176号 ★ 2010.10.17 |
■ タイ人拉致判明から丸5年が経過(1) ■ 1978年にマカオで発生したタイ人女性アノーチャー・パンチョイさんの失踪が、実は北朝鮮拉致であったことは、2005年11月になって初めて判明しました。 アノーチャーさん拉致は現在、拉致発生から32年が経過し、2005年11月の拉致判明からは丸5年を迎えようとしています。 本メールニュースでは数回に渡り、現在に至る5年間の動きを振り返ることにします。 アノーチャーさん家族の最新のコメントや、タイ人有識者のコメントも、順次紹介して行くことにします。 現在身元が明らかになっているタイ人拉致被害者は、アノーチャー・パンチョイさん(現在56歳)です。 1954年チェンマイ県生まれで、1978年(24歳)にマカオで行方不明になりました。 アノーチャーさんのマカオでの失踪が北朝鮮拉致であったことは、失踪後27年目の2005年11月になって、チャールズ・ジェンキンスさんの証言に基づくタイ政府身元確認によって初めて判明しました。 しかし現在まで、アノーチャーさんの帰還は叶わず、拉致は解決していません。 タイ政府は2005年の拉致判明直後から、北朝鮮に対してアノーチャーさんの帰還を交渉したものの成果はなく、北朝鮮は現在までアノーチャーさんの北朝鮮国内の存在を否定したままです。 今回のメールニュースでは、これまでの経緯について特に、 「アノーチャーさんの経歴と拉致判明の経緯」 「家族の取り組み」 「アノーチャーさん拉致の方法」 の3点を振り返ることにします。 ◎ アノーチャーさんの経歴と拉致判明の経緯 ◎ アノーチャーさんは1954年に、タイ北部のチェンマイで3人兄妹の末っ子として生まれました。 家業は農業で裕福ではなく、アノーチャーさんは義務教育を終了してから、家業を手伝ったり北部タイ内のタバコ工場に出稼ぎに出たりして家計を助けました。 19歳の時に、村の同じ年頃の女性数人とバンコクへ出稼ぎに行きました。 そして、マカオに出稼ぎの口があったために、1978年(24歳)にバンコクからマカオに行きました。 しかし、同年、マカオで突然行方不明になりました。 マカオにはタイから一緒に出稼ぎに行って同じアパートで暮らした友人2名がいましたが、この友人によると、「美容院に行って来る」と言って出かけたのが最後でした。 アノーチャーさんの失踪は、その後、マカオ警察が同時期に失踪したマカオ人女性2名の件と共に、街中に行方不明者3名の貼り紙を出したりして捜査することになりましたが、何の手がかりもつかめませんでした。 家族にはその後、何の情報も手がかりももたらされませんでした。 家族はただ、アノーチャーさんの帰りを待ち続けるしかなかったといいます。 しかし、失踪から27年目の2005年になって、事態が急転換します。 2004年に北朝鮮から日本に居を移したチャールズ・ジェンキンスさんが2005年に、北朝鮮で出会ったタイ人拉致被害者女性「アノーチェ」」について証言し、「北朝鮮で元米兵の妻となり、約9年間に渡り近所同士で親しく交流した」として、個人情報それに北朝鮮元山の海岸でアノーチェと一緒に撮影した写真も示したのです。 このニュースが2005年10月下旬にタイのテレビで大きく報道され、偶然見たアノーチャーさんの家族が名乗り出たことから、タイ当局が調査し身元確認しました。 これによって2005年11月には、「アノーチェ」とはチェンマイ出身のアノーチャー・パンチョイさんであることが明らかになったのです。 残念なことに、この情報に接する約3ヶ月前には、アノーチャーさんのお父さんが94歳で亡くなりました。 お父さんは最後の時までアノーチャーさんの身の上を案じていたといいます。 ◎ 家族の取り組み ◎ 2005年11月には、家族会・救う会のタイ現地訪問が行われ、それからアノーチャーさん家族は、日本をはじめ韓国やルーマニアの拉致被害者家族(会)とも密接に連携しながら、拉致問題の解決を訴えるようになりました。 アノーチャーさんの家族は現在、両親は亡くなり、実兄のスカム・パンチョイさんが家を継いでいます。 スカムさんは実兄としてこの問題の前面に立ち、2005年以来、タイ政府に面会したり日本を訪問しアノーチャーさんの帰還を訴えるなどしていましたが、翌2006年に重篤な敗血症を患い、後遺症で聴覚を失ってしまいました。 そのため現在は、スカムさんの長男でアノーチャーさんの甥であるバンチョン・パンチョイさんが、アノーチャーさんの帰還と拉致の解決を精力的に訴えています。 ◎ アノーチャーさん拉致の方法 ◎ チャールズ・ジェンキンスさんは、アノーチャーさんから北朝鮮で次のような話を聞いたと証言しています。 「マカオの職場にアジア人男性2名が現れ、アノーチャーと一緒に海岸で写真を取りたいと言い、職場のボスがOKしてしまったために、一緒に出かけていった。」 「夕方薄暗くなったマカオの海岸で、この男たちに突然縛られて注射を打たれ、担がれて小船に乗せられた。」 「小船で沖合いに出ると大型の船が停泊しており、これに乗り換えさせられた。この船で北朝鮮に連れて来られた。」 「船の上では2人のアジア系女性を見た。」 (補足1) 上記のアジア系女性2名は、マカオ警察がアノーチャーさんと同時に行方不明になったとして捜査したマカオ人女性、孔令インさんと蘇妙珍さんであることが明らかになっています。 さらに、孔令インさんは北朝鮮で、金賢姫元工作員の中国語教師であったことが、元工作員自身の証言から明らかになっています。 (補足2) アノーチャーさんが拉致された1978年前後は、日本人を含む外国人拉致が頻発しています。 1976年に金正日が北の工作機関に対して発した、より完全に外国人偽装した工作員養成指示及びそのための外国人拉致指示に基づき、展開されたものと考えられています。 (補足3) 金賢姫元工作員は2010年7月の訪日で、自身が上記の金正日指示に基づく工作員養成課程の第1期生であったことを明らかにしました。そこには自分を含む8名の同期生がおり、自分ともう1名(女性)は日本人偽装課程に入ったが、残る6名は「東南アジア人偽装」課程に入ったことを証言しました。 工作員東南アジア人偽装課程の存在と、アノーチャーさん拉致・他のタイ人拉致疑惑・東南アジア人拉致疑惑との関係は、今後十分に検証される必要があります。 ------------------------------------------------------ ※ARNKAからお知らせ 私書箱を開設しました。 会宛の郵便物は以下までお願い致します。 The Association for the Rescue of North Korea Abductees, Chiangmai(ARNKA) Tomoharu EBIHARA P.O. Box 29 Bo Sang Post Office A. Sankampaeng, Chiang Mai, Thailand 50131 ------------------------------------------------------ ARNKA(アーンカ)メール報の定期受信は本会までメールでお申込下さい。 配信停止を希望される方も同様にご連絡下さい。 ------------------------------------------------------ ARNKA配布資料 メールでお申込下さい。添付ファイルでお送りいたします(無料)。 1.タイ人拉致被害者アノーチャー・パンジョイさん個人史 (タイ語版・英語版・日本語版) 2.北朝鮮拉致問題に関するタイ外相インタビュー記事日本語訳[2006年2月] 3.タイ人拉致被害者実兄の思い [2006年4月ReACH/CHNK共催ワシントン拉致被害者救援コンサートで読まれた手紙] (タイ語版・英語版・日本語版) 4.タイ外務省ウェブサイトの北朝鮮紹介ページ日本語全訳 [タイ-北朝鮮関係の基礎資料] 5.タイ-北朝鮮貿易額統計2001-2005年 [タイは04年より北朝鮮の対外貿易高第3位](タイ語版・日本語版) 6.日本の北朝鮮人権法タイ語訳 7.タイ人拉致問題パンフレット[A4両面三つ折用](タイ語版・英語版・日本語版) ------------------------------------------------------ ARNKAの活動は支援者の皆様の寄付で賄われています。 拉致問題の一刻も早い解決のために皆様のご支援を心よりお願い申し上げます。 ご寄付の振込先 口座名義: TOMOHARU EBIHARA(ARNKA) 銀行名: The Siam Commercial Bank 支店名: Payap University Sub Branch 口座番号: 802-2-06137-3 ------------------------------------------------------ The Association for the Rescue of North Korean Abductees, Chiangmai(ARNKA) 北朝鮮に拉致された人々を救援する会チェンマイ 代 表 海老原 智治 (Tomoharu EBIHARA) 連絡先↓; P.O. Box 29 Bo Sang Post Office A. Sankampaeng, Chiang Mai, Thailand 50131 infoarnka[@]gmail.com メール送信の際はかっこを外して下さい。 www.arnka.com/ ------------------------------------------------------ |