★ ARNKAメール報第49号 2007.02.13
■タイ人拉致被害者アノーチャー・パンジョイさんの足跡(1)■


 現在判明しているタイ人拉致被害者アノーチャー・パンジョイさんの足跡は、19歳の1973年にチェンマイからバンコクに出稼ぎに行き、23歳の78年にはマカオに出稼ぎに行って、当地で拉致されたことが分かっています。
(詳細は本会配布資料「アノーチャーさん個人史」を参照)

 本会はタイ人拉致に関する各種の情報収集を行っておりますが、昨年より、アノーチャーさんがマカオに出稼ぎに行くまでの関係者に経緯や事情の情報収集を行っております。
 収集情報の多くはタイ語でのみ公開しておりましたが、問題の国際発信と情報共有の観点から、今後できるだけ日本語を含む多言語で公開して参ります。

 今回は、アノーチャさんがバンコク出稼ぎ時に世話になり、マカオへの出稼ぎの経緯をよく知る人物・A女史へのインタビューを2回に分けて紹介致します。

 インタビューの中では、A女史はアノーチャーさんをニックネームの「イット」と呼んでいます。

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ARNKA― アノーチャーさんとの出会いはどのようなものだったのか?

A女史
 「私は1969年にバンコク・ニューペッブリー通りのミースック小路に美容院を開いた。
 「イット」(アノ―チャ―の愛称)に初めて会ったのは店を開いてすぐの頃だった。店に客としてやってきたのが出会いだ。
 当時ミースック小路にはたくさんの風俗関係の女性が住んでいて、美容院が二軒あり、皆いずれかの店を利用していた。
 私の方の客筋はいろいろな意味で態度や性格が良い人だった。もう一つの方は、たばこを吸ったりがらが悪い感じの女性が多かった。
 イットは態度が非常に良い女性だった。非常に良い子で綺麗で礼儀正しかった。服装も話し方も良くて、風俗関係に従事している女性とは全然思えなかった。そしてがらが悪い女性らがきらいだったので、私の店の方の客筋と合ったのだろう。
 当初は客と店の主人という関係だったが、それからとても親しくなり、彼女もよくお土産を持ってきてくれたりするようになり私を年上で目上の女性として慕ってくれるようになった。
 私もいろいろ面倒を見るようになった。イットが客から食事に連れ出されるときには、彼女は客と2人きりで行くのを嫌って私を一緒に連れて行くまでになった。
 イットがお客からチェンマイへの帰省の経費としてもらった5千バーツを私に預けておいたこともあった。このときはイットは本当は帰省せずにお金はそっくり彼女がもらってしまったのだが。」

ARNKA― 他にアノーチャーさんの印象やエピソードはないか?

A女史
 「きれいで色白で清潔だった。態度も良かった。店でつけている「番号」は3桁だった。3桁はサービス料が高く予約をしなければいけないようなランクだ。外国人の常連客が多かった。イットは「客を取ってもそれは自分の外側のことで心はそうではないんだ」といっていた。いかにも風俗の女性といった服装や態度を取ることもなかった。お金を貯めては実家の父に仕送りをしていた。
 そのほか、イットはプリーチャーヌン分譲住宅地の家のローンがちゃんと払えるように、お金を節約して貯めていた。この家のローンの総額は400,000バーツだった。しかし、物件はローンが払いきれずに結局差し押さえられてしまった。」

ARNKA― アノーチャーさんはAさんと同じミースック小路に住んでいたのか?

A女史
 「最初の数年はそうだ。その後ミースック小路に部屋を借りたままモラコットホテルにも恋人と部屋を借りていた。そして、あちらとミースック小路を行ったり来たりしていた。」

ARNKA アノーチャーさんが働いていた店を知っているか?

A女史
 「最初は「ソフィア」という店にいた。「ソフィア」には数年いた。その後「チャオプラヤー1」に移った。」

ARNKA― アノーチャーさんがマカオに行った経緯を知っているか?

A女史
 「マカオに行ったのは、イットの周囲に外国で仕事をしてきた女性が数多くいて、彼女らから外国で高給を得た話を聞いていたのが理由だ。バンコクの風俗店に勤めていてもあまり儲からないが、外国に行けば非常に良い収入になったのだ。
 また当時実家の父が病気で、月々5,000バーツもの医療費が必要だと言っていた。
 マカオには、当時ミースック小路にいた女性たちのうち約20人ぐらいが代わる代わる仕事に行っていた。みんなマカオの「サンファーイン」という名の風俗店に行っていた。カジノの近くにあるという。この名前はきっと広東語だと思う。
 この店にはタイ人女性が100人以上いたそうだ。
 バンコクのスクンビット通り・ナーナー小路のラーチャーホテルの向かい側あたりに事務所があって、これが「サンファーイン」での仕事を斡旋するエージェントのようなところだった。イットもここで斡旋を受けた。
 ここで斡旋するのはマカオだけだった。このエージェントはタイ人の姉妹が2人でやっていた。マカオ人ではなかった。私も一度行ったことがあり彼女らに会ったことがある。気の強いやり手の女性だった。当時の年齢は30歳そこそこという感じだった。名前は忘れてしまった。今は事務所もなくなって彼女らがどこにいるのかも分からない。
 ここから送られてマカオに行く人の契約期間は1回6ヶ月だった。契約期間の中間で1度タイに帰ってくることが出来た。切れるとタイに戻ってきた。また行きたくなったら新たに応募して行っていた。中には戻らないでそのまま契約延長する人もいた。
 イットがマカオに行ったのはこのエージェントが出来て2〜3年目だった。このエージェントは始めてから2〜3年だけの間でタイ女性を合計1,000人ぐらい送っていたのではないだろうか。
 イットも上のような契約形態で行ったはずだが、もしかしたら現地で契約延長をしていたかもしれない。いずれにしても、契約が切れる前にマカオでいなくなった。
通常、出稼ぎ女性の外国への入国は難しいはずだが、彼女らは何の問題もなくマカオに入国できていたようだ。
 きっとマカオのイミグレに賄賂を渡すか何かして話がついていたのではないか。就労のための証明書のような書類にバラの花のスタンプが押してあったのを見たが、これが話がついていることを示すサインだったのかもしれない。
 イットはマカオで「トゥー・クワン・ヨン」という名の香港人スターが常連客となって付き、多くのチップをくれたという。5-8万ドルにもなったそうだ。」

(後半に続く)

■『告白』(チャールズ・ジェンキンス著)日本語版を実費頒布しています■
[タイ国内のみ]

 本書のタイ人女性「アノーチェ」の詳細な記載から、拉致被害者アノーチャー・パンジョイさんの存在が明らかになりました。タイ人拉致の根本資料であることから、日本からの取り寄せ実費のみで頒布しています。
 ぜひ本書を一読下さい。メールでお申込下さい。(ハードカバー:650バーツ。EMS送料無料)


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1.タイ人拉致被害者アノーチャー・パンジョイさん個人史
  (タイ語版・英語版・日本語版)
2.北朝鮮拉致問題に関するタイ外相インタビュー記事日本語訳[2006年2月]
3.タイ人拉致被害者実兄の思い
  [2006年4月ReACH/CHNK共催ワシントン拉致被害者救援コンサートで読まれた手紙]
  (タイ語版・英語版・日本語版)
4.タイ外務省ウェブサイトの北朝鮮紹介ページ日本語全訳
  [タイ-北朝鮮関係の基礎資料]
5.タイ−北朝鮮貿易額統計2001−2005年
  [タイは04年より北朝鮮の対外貿易高第3位](タイ語版・日本語版)
6.日本の北朝鮮人権法タイ語訳
7.タイ人拉致問題パンフレット[A4両面三つ折用](タイ語版・英語版・日本語版)
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