★ ARNKAメール報第52号 2007.03.05
■タイの北朝鮮難民(脱北者)実態調査の総括■


 2月25日から3月1日まで、タイにおいて各国のNGO・人権活動家による北朝鮮難民実態調査が実施されました。
 以下は、この調査を総括する「特定失踪者問題調査会」のメールニュース[調査会NEWS 477](19.3.4)の転載です。

 特定失踪者問題調査会については次のウェブサイトをご参照下さい。

 
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■[調査会NEWS 477](19.3.4)

■タイの脱北者に関する調査報告
           専務理事 真鍋貞樹

 北朝鮮難民救援基金加藤博理事長を団長として、韓国、日本、カナダの北朝鮮人権問題に取組むNGO団体が、2月25日から3月1日の日程で、タイに調査団を派遣した。調査会からは真鍋が参加した。

 タイには2003年から脱北者が流入しはじめており、その実態とタイ政府の対応を調査すること、ならびに日本人帰国者あるいは拉致被害者に関する情報収集が目的だった。

 2月25日には、脱北者からのヒヤリングを行なった。

 2月26日には、UNHCRタイ事務所を訪れた。午後には、韓国キリスト教会を訪問し、保護実態についてヒヤリングを行なった。

 2月27日には、バンコックから移動し、メーサイの移民局事務所と脱北者が多く入国地点とするゴーデントライアングル地区を視察した。

 2月28日には、チェンセーン警察、チェンコン警察を訪問。バンコックに戻って、タイの人権問題に取組む弁護士のメンバーと会談。

 3月1日に、バンコック市内にて記者会見を開催した。

 日本のマスコミでも報道されたが、今回の調査の成果は以下のような点である。

 第一に、タイに流入した脱北者の総数が、タイ当局によって拘束された数としては、900人を超えていることが明らかになったことである。ラオス、ミャンマー国境には他にも1000人規模で、潜伏しているとみられ、今後ともタイへの流入は増加するものと思われる。また、タイ国内に潜伏しており、タイ当局が把握していない数も相当数存在するとみられる。

 第二に、タイ当局の取扱いについて把握できたことである。タイ政府は基本的には密入国を阻止するという政策をとりつつも、一旦タイ国内に入国した脱北者に対しては、人道的な配慮をしている。具体的には、拘束して裁判をし、罰金もしくは拘留の措置のうえ、UNHCRによる難民認定の後に、韓国当局が韓国に移送するという手続きをとっている。以上の手続きは、他のラオス難民などと同様の手続きである。しかし、北朝鮮には強制送還した例はなく、中国と比較すれば格段の人道的対処をしている。

 第三に、タイは難民条約に加盟していないが、難民条約の趣旨に沿った取扱いと、タイ国内法とのバランスをとりながら進めていることである。これは、一方では人道的措置とも言えるが、一方ではタイ政府の方針が曖昧であり、今後どのように脱北者ならびに彼らを支援するNGOに対する政策がかわっていくかが不安要素である。この実態は、難民条約31条には、難民を逮捕・監禁することを禁止していることとは齟齬をきたしており、脱北者の地位が必ずしも保全されないことを意味している。

 第四に、脱北者に対する保護施設の整備は進められておらず、移民局の施設が収容人数をはるかに超えており、環境が極めて劣悪なことである。タイ当局の財政負担の限界を超えつつあり、今後、ラオス難民などと同様に、UNHCRやNGOなどとの協働による難民保護センターの建設が求められる。

 第五に、今回の調査で脱北者から日本人帰国者の情報などがもたらされたが、拉致被害者に関する情報は得られなかった。しかしながら、今後とも脱北者のタイへの流入は続いていくと予想される中、彼らへの聞き取り調査を丹念に行っていくことによって、何らかの情報が得られるものと期待できる。

                          以 上

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3.タイ人拉致被害者実兄の思い
  [2006年4月ReACH/CHNK共催ワシントン拉致被害者救援コンサートで読まれた手紙]
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