★ 第一 「皇后陛下」
皇后陛下は、病院に御出になって、怪我をした軍人や、病気になった軍人を、お見舞いになりました。

皆々、たいそう、ありがたがりました。

★ 第二 「忠義」
明治十年に、鹿児島の賊が、熊本の城を囲んだ時、城の中からは、こちらの様子を、遠くの官軍に、知らせようと、思って、その使いを、谷村計介に、言いつけました。

計介は、色々の難儀をして、とうとう、その使いをし遂げました。

★ 第三 「祖先」
徳川吉宗は、家康をまつってあるお宮に参る日には、どんなに、雨が降っても、きっと参りました。

また、ある年、家康の誕生日に、家来を集めて、祖先の手柄を、話して聞かせました。

祖先を、尊ばねばなりません。

★ 第四 「孝行」
二宮金次郎は、小さい時に、わらじを作って、お父さんの手助けをしました。

お父さんが亡くなってからは、縄をなったり、薪を切ったりして、それを売って、お母さんの手助けをし、また、弟を養いました。

金次郎は、孝行な子であります。

孝は、徳のもと。

★ 第五 「勤勉」
金次郎は、十二の時、土手の普請に出ました。

力が足らないので、他の人の世話になりましたから、わらじを作って、その人達に、贈りました。

その人達が、休んでいる間にも、自分は、休まずに、働きました。

★ 第六 「学問」
金次郎は、叔父の家にいました時、自分で、菜種を作って、種油と、取り替えて、毎晩、勉強しました。

叔父は、「本を読むより、家の仕事をせよ。」と、言いましたから、金次郎は、言いつけられた仕事を、済ました後で、勉強しました。

艱難は、人を玉にす。

★ 第七 「自営」
金次郎が、自分の家に、帰りました時、その家は、荒れ果てていました。

金次郎は、それを、自分で、直して、住みました。

金次郎は、精出して、働いて、しまいには、偉い人になりました。

★ 第八 「忍耐」
イギリスの大将、ネルソンは、フランスの艦隊を、二年余り、囲んでいました。

その間、雨が降っても、風が吹いても、少しも、油断せず、敵の様子に、気をつけていました。

そして、しまいに、敵を打ち破りました。

何事をするにも、辛抱が、大事であります。

★ 第九 「勇気」
後光明天皇は、雷がお嫌いなのを、直そうと思し召して、雷が、激しくなった時、わざと、みすの外に、出て、座って御出になりました。

それからは、雷のお嫌いなことが、お直りになりました。

勇気を、養わねばなりません。

★ 第十 「物事に慌てるな」
日本武尊が、蝦夷を御征伐に、御出になる途中で、悪者どもが、野に、火をつけて、尊を焼き殺そうとしました。

尊は、ちっとも、慌てず、こちらからも、火をつけて、悪者どもに、お勝ちになりました。

何事にも、慌ててはなりません。

★ 第十一 「難儀をこらえよ」
日本武尊は、色々の御難儀に、お遭いになっても、よく、ご辛抱なさって、悪者どもを、御征伐になりました。

何事をするにも、難儀をこらえねばなりません。

★ 第十二 「正直」
ワシントンは、庭に遊びに出て、お父さんの、大事にしていた桜の木を、切り倒しました。

「これは、誰が切った。」と、お父さんが、尋ねました時、「私が切りました。」と、隠さずに、答えて、詫びました。

お父さんは、ワシントンの正直な事を、たいそう、喜びました。

★ 第十三 「心の咎めることをするな」
この女の子は、お母さんの言いつけに、背いて、買い食いをしました。

後で、あー、悪いことをしたと、思って、心が咎めてなりませんでした。

お母さんが、その様子を疑って、尋ねましたので、この子は、そのわけを話して、詫びました。

心の咎めることを、してはなりません。

★ 第十四 「自慢するな」
昔、タイマノケハヤという人がありましたが、「自分ほど、力の強い者は、あるまい」と、言って、自慢しておりました。

その時の天皇が、それをお聞きになって、ノミノスクネという人を呼んで、力比べをおさせになりましたが、ケハヤは負けました。

力が強くても、学問が出来ても、自慢してはなりません。

★ 第十五 「度量を大きくせよ」
昔、貝原益軒という名高い学者がありました。

留守の内に、弟子が、相撲を取って、益軒の大事にしていたぼたんの花を、折りました。

弟子は、叱られるかと、心配して、人に頼んで、詫びてもらいましたが、益軒は、少しも、怒らずに、許してやりました。

★ 第十六 「健康」
益軒は、小さい時から、身体が弱いので、常々、養生をしました。

それで、丈夫になって、八十五までも長生きしました。

健康は、大切であります。

丈夫な心は、丈夫な身体に、宿る。

★ 第十七 「倹約」
徳川光圀は、女中達が、紙を粗末にするので、紙漉き場を見せにやりました。

女中達は、紙漉女が、冬の寒い日に、水の中で、働いているのを見て、紙漉仕事の、難儀なことを覚りました。

それから紙を、大切に、使うようになりました。

ものを、無益に、使ってはなりません。

★ 第十八 「慈善」
鈴木今右衛門夫婦は、情け深い人でありました。

その子に、十二になる娘がありましたが、ある寒い日、同じ年頃の女の子が、ものもらいに来ました。

今右衛門の妻は、娘に向かって、「あの子は、単衣物一枚で、震えていますが、お前の着ている綿入れを、一枚、脱いでやりませんか。」と、言いました。

娘は、おとなしく、良い方の綿入れを脱いで、与えましたので、今右衛門夫婦も、たいそう、喜びました。

難儀な人を、救わねばなりません。

★ 第十九 「召使いを憐れめ」
田邊晋齋は、寒い晩に、供を連れて、人の家に行きました。

帰る時、供のものが、門の外に、寒そうに、立っているのを見て、「あー、気の毒であった。」と、言って、労りました。

それから、寒い晩は、なるべく、外へ、出ないように、気をつけました。

召使いを、憐れまねばなりません。

良い主人の下に、良い召使い有り。

★ 第二十 「恩を忘れるな」
弥兵衛の主人が、島流しに遭いました。

弥兵衛は、ご恩返しは、この時だと思って、まず、一心に、船をこぐことを習いました。

そして、はるばる、島に渡って、主人に会いました。

主人が、許されて、帰ってからも、親切に世話をしました。

★ 第二十一 「友達」
伊藤冠峰と南宮大湫とは、仲の良い友達でありました。

大湫は、家族を残して、江戸に行きましたが、火事にあったため、家族を、呼び寄せることが、出来ませんでした。

冠峰は、それを、気の毒に、思って、旅費をこしらえて、大湫の家族を、江戸まで、送ってやりました。

友達には、親切に、せねばなりません。

★ 第二十二 「人をそねむな」
吉田松陰の弟子に、高杉と久坂という二人の書生がありました。

高杉は、勉強しませんから、松陰は、常に、久坂を褒めて、高杉を戒めました。

高杉は、それから、良く、勉強して、学問が、進みましたので、松陰は、高杉を褒めて、何事も、高杉と相談するようになりました。

それでも、久坂は、決して、高杉をそねまずに、「高杉君は、偉い人だ。」と、言っていました。

高杉も、「久坂君は、立派な人だ。」と、褒めていました。

松陰は、この事を聞いて、たいそう、喜びました。

人を、そねんではなりません。

★ 第二十三 「礼儀」
ある所に、一人の娘がありました。

八歳になっても、礼儀を守りませんから、お父さんは、どうかして、それを直したいと、思いました。

ある日、お父さんは、娘を呼び寄せて、礼儀の大切なことを、教え、そして、一枚の紙を、壁に、貼り付けさせて、娘が、卑しい言葉遣いや、不作法な振る舞いをするたびに、その紙に、黒星をつけることにしました。

年の暮れになって、娘に、その数を数えさせて、戒めました。

娘は、それから、だんだん、礼儀を守るようになって、とうとう、一つの黒星も、つかないようになりました。

★ 第二十四 「預かり物」
太郎は、自分の家に、預かったこうもり傘をさして、出かけようとしました。

姉さんは、それを止めて、「それは、預かりものであるから、勝手に、使ってはなりません。自分のを、おさしなさい。」と、言いました。

太郎は、姉さんの言うことを聞いて、その傘を、元の所に、しまって、自分の傘をさして、行きました。

預かりものを、勝手に、使ってはなりません。

★ 第二十五 「近所の人」
佐太郎は、近所の人たちに、親切を尽くしました。

ある時、近所の人の家の屋根が、破れているのを見て、村の人たちから、わらをもらってやって、それを直させました。

また、火事にあった人には、竹を切って、与えました。

近所の人は、仲良くして、助け合わねばなりません。

★ 第二十六 「公益」
佐太郎の村に、土橋がありましたが、たびたび、損じて、村の人たちが、難儀をしました。

佐太郎は、人々と相談して、それを石橋に、掛け替えました。

それからは、壊れることもなく、村の人たちは、たいそう、喜びました。

世のためになることをするのは、人の務めであります。

★ 第二十七 「復習」
良い日本人になるには、忠義の心を、持たねばなりません。

お父さんや、お母さんには、孝行を尽くし、兄弟とは、仲良くし、友達には、親切にし、召使いを憐れみ、近所の人には、良く、つきあわねばなりません。

何事にも、正直で、心の咎めるようなことをせず、勇気があって、辛抱強く、物事に、慌てないようにし、自分のことは、自分でし、そして、難儀をこらえねばなりません。

また、身体を丈夫にし、倹約を守って、仕事に、精出さねばなりません。

そのほか、礼儀を守り、自慢をせず、恩を受けては、忘れないようにし、人をそねむようなことなく、度量を大きくし、人のものを、大事にせねばなりません。

かように、自分の行いを謹んで、良く、人に交わり、その上、世のため、人のために、尽くすように、心がけると、良い日本人になれます。

2006年11月27日更新