★ 第一 「孝行」
お房は小さい時から子守りなどに雇われて、家の暮らしを助けました。

また父が草履や草鞋を作る側で藁を打って手伝いました。

その後奉公に出ましたが、暇があれば、許しを受けて家に立ち寄り、二親を慰めました。

★ 第二 「親類」
政男の叔母が子供を連れて政男の家へ来ました。

政男の父母は喜んで叔母を座敷へ通し、色々の話をしています。

政男もおもちゃや絵本を出して、従兄弟と面白く遊んでいます。

★ 第三 「兄弟仲良くせよ」
お弥経は弟の三郎と野原へ行きました。

蓮華草やタンポポやスミレが綺麗に咲いています。

二人は花を摘んで遊びましたが、三郎の摘んだ花があまり少ないので、お弥経は自分のを分けてやりました。

★ 第四 「自分のことは自分でせよ」
お弥経が三郎に学校へ行こうと言った時、三郎はまだ用意が出来ていませんでした。

慌てて姉に「本や手帳を鞄に入れて下さい。」と頼みました。

母が「自分のことは自分でなさい。」と言いました。

それで三郎は自分で鞄の始末をして、姉と一緒に学校へ行きました。

★ 第五 「勉強せよ」
ここに二人の男がいます。

二人は元同じ学校にいました。

一人は先生の戒めを守らず、怠けてばかりいたので、こんな哀れな人となりました。

一人は良く先生の教えを聞いて、勉強したので、今は立派な人となりました。

蒔かぬ種は生えぬ。

★ 第六 「決まり良くせよ」
お竹はお絹の家へ遊びに行って、面白く遊んでいましたが、十二時に近くなったので、急に帰ろうとしました。

お絹も妹も今しばらくと止めましたけれども、お竹は「ご飯ですから、帰らなければなりません。ご飯を済ましてまた来ます。」と言って帰りました。

★ 第七 「自慢するな」
二羽の雄鶏が蹴合いをしました。

一羽は負けて小屋の隅へ逃げ込みました。

勝った方は屋根の上へ飛び上がって、勢いよく勝ちどきをあげました。

この時大きな鷲が飛んできて、その威張っている雄鶏を一掴みに掴んで行きました。

★ 第八 「臆病であるな」
臆病な人が闇夜に淋しい道を通りかかりました。

垣の上から長い顔の化け物がこちらを睨んでいるように見えたので、たいそう驚いて友達の家へ逃げ込みました。

友達がすぐその人と一緒に行ってみると、それは瓢箪が下がっているのでした。

★ 第九 「身体を丈夫にせよ」
二人の兄弟は、身体が丈夫でなければ立派な人になれないと学校で教えられました。

それから二人は飲み物や食べ物に気をつけ、朝は早く起きることにしました。

また冷水摩擦や深呼吸が身体のために良いと教えられましたから、二人は次の朝からそれを始めました。

★ 第十 「友達に親切であれ」
文吉が大きな風呂敷包みを側に置いて、松の木の下に休んでいました。

小太郎は遊びに出た途中で、それを見て、文吉に「その包みは重そうだから、二人で持って行きましょう。」と言いました。

そうして包みの結び目の下へ竹を通して持って行きました。

★ 第十一 「不作法なことをするな」
文吉の家へ小太郎が遊びに来て、絵本を見ておりました。

しばらくして文吉は母に呼ばれたので、急いで絵本を跨いで行きました。

母は用を言いつけた後で、「物を跨いだり踏んだりするような不作法な事をしてはなりません。」と言って聞かせました。

★ 第十二 「人の過ちを許せ」
小太郎は野原へ出て文吉の来るのを待っていました。

その間に文吉から借りた鞠を過って川の中へ落としてなくしました。

それで文吉が来た時、そのわけを話して詫びました。

文吉は「過ちだから仕方がない。」と言って、許してやりました。

★ 第十三 「悪い勧めに従うな」
小太郎と文吉が野原で遊んでいると、4,5人の友達が来て、「堤の下へ行って遊ぼう。」と誘いましたので、二人は付いていきました。

すると友達の内の一人が「小屋に隠れていて通る人を脅そうではないか。」と言い出しました。

二人が「それは悪い遊びだ。」と言って止めましたが、みんなが聞きませんので、二人は別れて帰りました。

★ 第十四 「正直」
松平信綱は将軍の屋敷で、朋輩と戯れて大切な屏風を破りました。

間もなく将軍がそこを通りかかり、「これは誰が破ったのか。」と咎めました。

信綱は「私が破りました。」と少しも隠さず申し上げてお詫びしますと、将軍はかえってその正直なのを褒めました。

正直は一生の宝。

★ 第十五 「天皇陛下」
天皇陛下が天皇におなりにあそばした初めの頃、しばらくは青山離宮から宮城へ出御になりました。

そのたびに御道筋の電車を止めているのを御覧あそばして、人々の不便を思し召し、「他の道を通るように。」と仰せ出されました。

★ 第十六 「忠義」
海軍中佐広瀬武夫は旅順の港口を塞ぐ為、闇夜に汽船に乗って出かけました。

敵の撃ち出す大砲の弾の中で勇ましく働いて引き揚げようとしましたが杉野兵曹長がいませんから、三度も船の中を尋ね回りました。

いよいよいないので、短艇に乗り移って帰りかけた時、中佐は大砲の弾に当たって立派な戦死を遂げました。

★ 第十七 「約束を守れ」
広瀬武夫はロシアから帰る道で、たいそう難儀な所を通ることになりました。

その前に武夫はある子供とロシアの郵便切手を土産に持って帰る約束をしたことを思い出しました。

それでその子供に宛てた手紙を書いて、郵便切手を入れ、それを自分の兄の所へ送って、「もし私が死んだら、この手紙を子供に届けて下さい。」と頼んでやりました。

★ 第十八 「恩を忘れるな」
お鶴が母と一緒に隣村の祭りを見に行ったことがありました。

その時母にはぐれて、たいそう困っていたから、この年寄りが親切にお鶴を連れて母を訪ねてくれました。

お鶴はその恩をいつまでも忘れません。

今も学校から帰る道で挨拶をしています。

★ 第十九 「祖先を尊べ」
稲生ハルは毎月一日十五日、その他祖先の命日には、朝早くから起き、身体を清めて、仏壇の掃除をし、花を捧げ、香をたき、色々供え物をしてお祀りをしました。

もし人から珍しい果物などを貰うことがあると、きつと仏壇に供えました。

★ 第二十 「年寄りに親切であれ」
小滝と五郎が外へ遊びに出かけました。

道に子供が大勢集まっているので、何事があるかと立ち寄って見ますと、一人の年寄りが身体が不自由なので、落とした銭を拾うのに困っているのでした。

二人は気の毒に思って、その銭を探し集めて年寄りに渡しました。

★ 第二十一 「召使いを労れ」
この子は水を貰おうと思って女中を呼びましたが、すぐに来ませんのでたいそう腹を立てました。

そして女中が働いている井戸端へかけていって、大きな声で叱りました。

母がそれを聞きつけて、「そんなことに人を使ったり、腹を立てたりしてはいけません。召使いは労って使わなければなりません。」と言って聞かせました。

★ 第二十二 「辛抱強くあれ」
娘の手にかけていた糸がもつれて絡まりました。

縺れが急に解けないので、娘は母に「この縺れた所を切り捨てましょうか。」と言いますと、母は「いえ、いえ、辛抱して解いて行けば解けないことはありません。」と教えました。

それで娘は骨を折ってその縺れを解きました。

★ 第二十三 「工夫せよ」
十吉は自分で工夫して色々の面白い物を造って楽しんでいます。

ある時は大工の切り捨てた木の切れを組み合わせて家をこしらえました。

またある時は木の切れで舟を造り、それから竹を削って帆柱を立て、白い布を母に貰って帆にしてかけ、池の上を走らせました。

★ 第二十四 「規則に従え」
一人の子供が土手に上りました。

連れ立っていた友達が立て札を指して、「この通り、上ってはならないと書いてあります。規則に従わなければなりません。」と言って止めました。

初めの子供は「誰も見ていないから構わない。」と言いますと、友達は「人が見ていなくても規則には従わなければなりません。早く下りなさい。」と言いました。

それで初めの子供は悪いと気が付いて土手を下りました。

★ 第二十五 「人の難儀を救え」
一人の丁稚が車を引いて坂道を上って行きましたが、ぬかるみにかかって、難儀をしていました。

吉太郎は学校の帰りがけに、それを見て気の毒に思い、後から押し上げてやりましたので、やっと坂の上へ行くことが出来ました。

丁稚は喜んでお礼を言いました。

★ 第二十六 「良い子供」
この子は先生の教えを守る良い子供です。

学校に行っても、家にいても、心がけが良く、友達とは仲良くし、人から受けた恩を忘れず、自分のことは自分でし、いつも天皇陛下の御恩をありがたく思っています。

その上ものも良くできるので、今日学校で賞状を貰いました。

父母は喜んで、「この後もますます骨を折って良い人になるようにしなければなりません。」と言って聞かせています。

2006年12月5日更新