* 第一部 * 梅花烙
皓禎貝勒(♂) 硯親王府第一公子(長男)として育てられるが、実は王族とは何の関係もない平民出身の男子。白吟霜(♀) 売唱女。右肩に"梅花烙"。実は王爺と福晉が生親のバリバリ硯親王府第四公女(四女;四格格)。福晉(♀) 硯親王府王爺の正室。実は、白吟霜の生母。蘭馨公主(♀) 皓禎の正室。乾隆帝の娘にしてお姫様育ち。小寇子(♂) 硯親王府家臣。皓禎の教養指南役。阿克丹(♂) 硯親王府家臣。皓禎の武術指南役。朱香綺(♀) 両親と死別して身売りさせられた薄倖の少女。吟霜に救われ行動を共にする。
* その一 *
演唱;姜育恆
18世紀末、清朝乾隆帝の時代、硯親王の正室福晉は男児に恵まれず、姉の口車に乗って自ら産んだ女児を無名の男児と交換してしまう。女児の右肩に目印として梅花の烙印を・・・。
福晉が産んだ女児は竹籃に乗せられ川に流されるが、子宝に恵まれない白勝齢・蘇翠華の売唱夫婦に拾われ、白吟霜と名付けられる。
12年後、公子として育った皓禎は、初狩猟に際して白狐を捕獲。しかし、母狐だったため、祖先の教えに遵って逃がしてやる。父王爺は皓禎を誇らしく思い、母福晉も記念の白狐尾を玉珮につけてやる。
一方、吟霜の母は既に亡く、父勝齢を支えながら売唱を習得し、客から貰う花銭で何とか生計を立てている。
二人が20歳のとき、北京の茶館で売唱中の吟霜父娘は、狼藉を働く公子貝勒子らから皓禎と家臣小寇子に救われて運命の出逢いをする。
時の皇帝乾隆帝は、娘蘭馨公主の婿選びにと、四人の公子を集めて自ら試験を行う。文武両面に渡り、皓禎は皇帝の覚えめでたきを得る。
父勝齢は、貝勒子らから吟霜を救おうとして殴打され、帰らぬ人に。今はの際に、自分ら夫婦が吟霜の実親ではないことを明かす。
父の葬儀代捻出売唱中、吟霜はまたも貝勒子一味に絡まれるが、皓禎、小寇子、阿克丹に救われる。
父を埋葬後、吟霜は皓禎の厚情で常媽の家に間借りして自活することになる。そして、門前で少女乞食を発見。その少女朱香綺と三人で暮らすことになる。
台詞に意味がある部分。映像にはないが、皓禎の弟皓祥が王府内で踊子娘に狼藉を働き、その娘が入水自殺する前場面がある。葬送に際し、皓禎は厚情から娘の母親にそっと金銭を渡すが、「金銭など要らない。娘を生き還らせてくれ。」と母親に泣き叫ばれる。こうして、金銀財宝・地位・名誉等を争うばかりで人情を欠いた王侯貴族らの虚飾の裏側が抉り出されます。
第二部に繋がる"白狐刺繍屏"が登場。皓禎の我が儘な部分が反映した部分。女流瓊瑶(によう)の原作とあって、全三作が"母親の眼"で書かれているように思います。主人公といえども、男は我が儘勝手で女が傍についていないと自分で何一つ出来ないダメな生き物だ、と。
福晉は皓禎と吟霜の将来を考えて金銭で解決しようとする。それは福晉の"善意"なのだが、苦労人の吟霜には通じない。吟霜が、「金銭も結婚相手も要らない。欲しいのはあなたの真心。」と啖呵を切る場面は迫力があります。「満漢地位之尊卑」がでてきますが、時代背景は、"満尊漢卑"です。
聖旨により公主と皓禎の結婚が決まった王府は慶祝ムード。二人の反応が対照的です。当の皓禎が露骨に嫌がって周囲を困惑させるのに対し、吟霜は「皓禎にとって名誉なこと」と言う。吟霜の態度は、"顔で笑って心で泣く"といった感じで、妙に"日本的"ですね。
満洲版の結婚式です。一般庶民とは違うのでしょうが。花嫁の輿に矢を射るんですね。間違って花嫁に当たったらどうするのでしょう? 「我有點害怕(わたし、ちょっと怖い)」という公主は、いかにも"お姫様育ち"らしい。それに対して皓禎はなんですか。新婚初夜に仮病なんか使って。露骨すぎます。
亡夫墓参の吟霜を皓禎が訪ねる。「没有跟他圓房(彼女とは夫婦生活に入っていない)」という皓禎はいったい何様なんだと思わせます。吟霜は"不倫"を罪と知っていますが、皓禎にはその意識がまるでない。だから、公主との不仲の原因が己自身にあることに、最後まで気がつかない。幾ら文武に優れていようと、肝心な部分でダメ男です。皓禎は吟霜に"恋"し、吟霜は皓禎を"愛"している。この違いでしょうかね。
「吟霜は自分と似てないか」と尋ねる福晉は"母親の直感"ですね。新婚夫婦の会話は、お互いを誉め合う歯の浮くような内容ですが、公主のほうがまだ正直、皓禎は自己弁護のために相手を持ち上げているだけ。吟霜に貰ったハンカチを懐中するとは不注意も甚だしい。
吟霜に貰った梅花ハンカチ露見事件は、福晉の機転で、「自分のハンカチ」つまり母親の所有物、ということで公主を誤魔化し、事無きを得る。
福晉の計らいで吟霜と香綺は、丫頭として王府で働くことになる。王爺が吟霜に神気を感じるのは"父親の直感"か。本当は下賤の身なるゆえか、皓禎は発情したただの禽獣とまるで同じ。吟霜のほうが、沈着冷静でちゃんと道理を見据えていますね。
吟霜が私情を捨てて奉公に徹しているにも拘わらず、またも皓禎が禁を破り、二人が逢ってるところを公主に見られてしまう。皓禎の弁解が、公主の感情を逆撫でするような開き直りでは、もうどうしようもない。本当におつむが悪すぎ。一方、公主側は、皓禎を言い負かせられないので、吟霜を手許に置き、いじめぬいて王府から逃げ出すよう仕向ける作戦。こちらのほうが遙かに知恵(悪知恵ではあるが)が廻る。
ご覧の通りです。これには説明は要らないでしょう。強い相手には唯々諾々で、抵抗しない(できない)相手を徹底的にいじめ抜く。これが"大陸文化"なのですかね。
(20)に同じ。
見かねた阿克丹が吟霜を救いに来る。後に福晋が来て吟霜を引き取ることに。一介の丫頭にすぎない吟霜が、なぜ皓禎の関心を惹いたり福晋の寵愛を受けたり、家臣らの信頼を集めるのか、公主には理解出来ない。
《次頁》へ続く → 「その二」を視聴する。